2006/04/28 06:57 PM
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いせやに行ってきました!
高田 渡さんがこよなく愛した吉祥寺の焼き鳥屋です。
渡さんが生きている間に行きたかったのですがかないませんでした。
今月いっぱいで取り壊されるという噂を聞き、これは行かなきゃと思い、月曜日に行ってきました。
かなり古い(築55年以上らしい)木造の二階家で、地震がくると危ないということでビルに立て替えるらしいのです。

吉祥寺の駅から井の頭公園のほうに歩いて5分ほど、ビルに挟まれてその店はありました。
そこだけが昭和30年代の風景のようです。
焼き鳥を焼く煙がもうもうと上がっています。

お昼過ぎに着いたのですが、カウンターといくつかのテーブル席のある一階はほぼ満席。
通りに面した立ち飲みカウンターはまだ空いていましたが。
一つ二つ空いている席に女一人で入り込むのはためらわれ、階段を上がって2階の座敷へ行ってみました。
「タカダワタル的」番外編で渡さんが寝転んでいた所です。
3~4人の客しかおらず寂しい感じがしたので、一階に戻ってカウンターの端っこの席をみつけて腰をおろしました。
若いお兄さんに生ビールと焼き鳥と煮込みと生野菜(食べすぎ!?)を注文して、店内をゆっくりと見廻しました。
座った席からは店内がぐるりと見渡せました。
どこもかしこも煙であぶられて煤竹のようないい色になっています。
昔から貼ってあるらしきポスターや団扇なんかも絵が解らなくなって、テカっています。
いろんな人がいます。
思い思いにお酒を呑み、焼き鳥を食べています。
殆どが常連さんのようで、隣に座ったおじいさんは「今日は何にする?」と、店のお姐さん(かなりベテランのいせやの雰囲気そのままの方です)に聞かれていました。
壁に向かって話しかけながら呑んでいるおじさんもいます。
若いカップルも何組かいました。
私みたいに女一人ってのは見当たりませんでしたが。

運ばれてきたビールを飲み、焼き鳥をほおばりながらこの雰囲気の中に身を委ねてみると、渡さんの姿が見えてきました。
向こうのカウンターに酔っ払って嬉しそうな笑顔の渡さんが・・・
焼き鳥の煙が目に沁みたせいもあって、涙が溢れてしまいました。

「場もまたそこを通り過ぎていく人たちを記憶するのです」と、友部正人さんが日記で書かれていたということをタカダワタル的の掲示板で「若輩もの」さんが教えてくれました。
とても印象的な言葉でした。

写真に興味を持っていた渡さんは、著書「バーボン・ストリート・ブルース」で書いています。
  
今、撮りたいなと思っているのは、「人が座っていたであろう椅子」の写真である。
写真に人は写っていないが、さっきまでその椅子に人が座っていたことが伝わる写真、そんな写真が撮れないものだろうかと思っている。
 
椅子は座っていた人を記憶しているのです。
いせやのカウンターもしかり。
そこに来る人たちの喜怒哀楽を50年以上も受け入れてきたいせやは、ほんとに沢山の人の、その時々を記憶しているのでしょう。
それが今のいせやの雰囲気になっているのでしょうね。
渡さんの面影もしっかりと刻み込んで。

お店が取り壊されてしまったら、その記憶はどこへいってしまうのでしょう。
新しくなったビルには戻ってこないでしょう。
壊してほしくない・・・でも、確かにグラっときたらヤバイかも・・・

店の人に聞いてみました。いつ取り壊されるのか。(外の壁に貼ってあった建築計画には5月1日着工と書かれていた)
「そういう話もあるのですが、まだはっきりいつとは決まっていません。」との答え。
え?もしかしたら計画延期あるいは中止もありえる?
いずれにしてもすぐにも壊すような感じではない、また来れるかもしれない。

持ち帰り用に頼んでおいた焼きとうもろこしが出来上がったので、名残惜しい気持ちで席を立ちました。
このあと井の頭公園に行って、とうもろこしを食べながらまた渡さんを偲ぶのです。(よく食べるよねっ!)

東京駅の人混みに圧倒されて、着いたとたんに小田原に帰りたくなる私ですが、このいせやの雑踏はとても心地よく、ほろ酔い加減で幸せなひとときを過ごすことができました。
渡さん、いせやさん、ありがとう。また来るね。
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2006/04/28 06:57 PM